| 野洲の町に優しさを感じるのはもう一つ、理由がある。本藍染である。藍の深いあお色は生命の神秘に潜む色なのだ。藍は生きているのだ。藍染めの技術を伝えているのが明治時代から続く老舗『紺九』の四代目森義男さん。百三十年も前の信楽焼の甕が三十本、タタキに埋めこまれていた。「この甕、見て下さい。藍の機嫌がいいんですよ。ほら、こっちは機嫌が悪い…」。甕の真中にこんもりと青い泡がある。藍の華というのだそうだ。これが形よく盛り上れば藍は御機嫌なのだ。―美しい藍の色を出すために、藍師は絶え間ない気苦労が続く。「子育てと同じですよ」と森さんは笑う。優しい笑顔だ。そうなんだな。ゆったりした気持ちでないと藍は育てられないんだな。子どもだってそうだもの…過保護はダメだが、優しさは無限であってよいのだから―。
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| こうして育てた藍の液に布を浸す。茶色からグリーン、そして、一瞬の後に鮮やかなブルー。藍の色だ!まるで手品のように…。これを何回も何回も、しかも、どの甕にも公平に浸してやるのだ。深い、優しい藍の色が現われてくる。
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▲藍の華…
機嫌のよい状態
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