| 日々、忙しく暮らしていると、なかなか、日常の空間以上には出ていけないが、時々、より広い所に身をおいてみるのも悪くない―と、思ったのは、栗東町金勝山の県民の森を訪ねた時だった。
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| 全国の“森林浴の森百選”に選ばれた金勝山系の一画を占める県民の森は、広々とひろがる芝生の大空間を囲む森。芝生広場には空間と、わずかな樹木以外は何もない。はるかに琵琶湖や三上山を見る展望地だ。この芝生広場に立っていると、ここなら天に手が届きそうだ…とさえ錯覚する。それほど空間が生き生きしている、不思議な場所だった。町内の若者たちの間で、ここで素晴らしいコンサートをやりたい、という希いがあるそうだが「イャー、電気が来てなくて…(つまり、電源がないわけで…)」とのこと。よいではないか。文明の利器が何もなくたって。春秋の休日は家族連れや若いグループでこの広い芝生もいっぱいになってしまうという。みんな、この何もない空間を楽しみにやってくるのだ。
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| ここから南の森へ入って行けば、聖武天皇の勅願で創建された金勝寺が、桧林の静寂の中にあり、さらに奥につめれば、高さ七メートル、幅四メートルの花崗岩に刻まれた阿弥陀三尊像の狛坂磨崖仏に出あう。これも息を呑む大きさだ。三尊像の周りには十二体の小仏像が刻まれているが、いずれも鮮明な線が残り、大陸的な顔だちからは笑みさえうかがえる。森閑とした山中での仏との出会いの感激は、仏に迎えられたという歓びにも似たおもいだった。
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