| 寒空を焦がす 勝部の火祭り |
| 伊勢遺跡が発見された伊勢町は東海道線沿いの町で、その隣に勝郡町がある。そこにあるのが勝部神社。室町時代築の立派な本殿(重文)が歴史と信仰の厚さを示している。この勝部神杜で正月八日、勇ましくくりひろげられるのが、奇祭、勝部の火祭り。
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| 音をたてて燃えさかる16基の松明の周りを下帯ひとつの若者たちが鉦や太鼓を叩き、「ゴーヨヒョーヨ」と叫びながら踊り回るのだ。長さ5〜6メートル、直径3メートルはあろうか…、巨大な松明の先は菜種ガラがつけられていて、火は渦を巻いて燃え上る。
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| 昔々、天皇の病気が大蛇のたたりだというので、その大蛇を焼き殺して退治した、というのが祭りの始まりという。巨大な松明は大蛇をあらわし、「ゴーヨヒョーヨ」は“御悩平癒”という意味のかけ声だそうだ。今では無病息災と豊作と、正月の終わりを祝って行われている。
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| 祭りは寒気の下り始めた夜七時半頃から次第にクライマックスに向かう。御神酒の入った若者たちの肌はアルコール分と炎と熱気で桜色に染まり、炎に負けない興奮が渦巻く。祭りをする者、見る者、この瞬間、完全に日常から遊離。祭りの興奮の中でしみじみと、火とはなんて美しいものだろうと思った。科学がどれほど進歩しようと、火のもつ神聖さ、神秘さは変わらない。厳かな畏れさえ感じる。炎の中には人間の原始性を呼びさます何かがあるに違いない――。
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| 何年か前、松明点火には少し早く守山入りした時のこと、ちょうど大太鼓が町を練り歩いていた。「氏子たちの罪やけがれを集めているンです。」と、その時、教えてもらった。で、どうするかというと、松明に火を点ける時、その太鼓が打ち鳴らされるのだ。「太鼓のドーンという音に驚いて罪やけがれがとび出しますやろ。ところが、とび出た先は、火の中で…。これで罪もけがれも万事休すですワ。」成程。真偽の程は確認しなかったが、面白い解説に笑ってしまった。祭りは調子がいいのがいい。このような愉快なおじさんたちが、勝部の火祭りを盛り上げていらっしゃるのだな、と思ったものである。
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▲勝部の火祭り。
写真/守山市商工課 |