財団法人 滋賀県建築住宅センター
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甲西町

 
《地元》にこだわった女性企業家たち
   一九七○年前後だったろうか…、女性たちが性を越えての社会変革を始めたのは。 それはただ権利を主張するだけでなく、「まず自分自身を生きる」ことを主張する運動であった。そのころから三十年、女と男の自立と共生は、行きつ戻りつしながらではあるが、社会に融合し始めている。
 そんなことに思いが及んだのは甲西町の農業組会法人「グリーンファーム香清」で、この組合成立に至る話を聞いてだった。
 元々が農業の町だった甲西町では農村婦人の地位向上を目指して女性たちの生活改善グループがあり、 地元で穫れた農産物を使って安全でおいしい特産品作りがすすめられていた。それをきっかけの一つと して、〈自立〉を視野に入れた「グリーンファーム香清」が設立された。ハーブ栽培への取り組みとかケナフ栽培への取り組みとか、とにかく地に足をつけて社会の動きに参画。声高な主張ではなく、いい仕事 をすることで「自分自身を生きる」スタイルを確立してきたということである。現在組合員は五十八人。 人気のハーブクッキーやハーブケーキの他、善水寺みそや漬物など女性ならではのアイデアの十三品商品になっている。
 ところで、その活動の一つに地元の食材を使った料理の提供がある。名づけて《十二坊香り御膳》。八人以上のグループで予約しておけば食することができる。
 その際、使う器も〈甲西町〉にこだわる。町の伝統工芸品である近江下田焼や竹皮細工を使うのだ。

グリーンファーム香清が開発した手づくり商品の数々。
甲西町の伝統工芸


呉須の青色が美しい近江下田焼。

   青い呉須が特徴の近江下田焼。手にしたときのぼってリとした膚(はだ)あいが昭和の始め柳宗悦たちが唱えた〈民芸〉という意味をつくづく思いおこさせる雰囲気をもっている。
 下田焼は江戸宝暦年間(1750年頃)に始まった焼物である。江戸時代の最盛期には十余軒の家が日用雑器を中心に作っていたというが、明治になって衰え、とうとう一時、廃窯になっていた。それを平成六年、小迫一氏が再興。町は再開窯に合わせて町内の他の伝統工芸も守り育てるべく伝統工芸会館を設備。会館には《近江木綿正藍染(しょうあいぞめ)》と《竹皮細工》の展示もある。どちらも下田焼と同じ頃に下田で生まれ、伝えられてきた仕事だ。
深い藍の色が美しい藍染は植西恒夫がタデアイの栽培からスクモづくり、染色、織りまで、すべて昔ながらの技で伝え、また、竹独特の渋い光沢が楽しめる竹皮細工は谷口欣一氏が竹を使って、容器を中心に製作している。
  展示室の作品と製作過程の説明等を見るうちに、こうした作品を見ること、触れること、使うことの大切さを思った。伝統工芸だから、というのではなく、〈もの〉の生命を思うために。今、何でも機械で簡単に作り出されるようになって、〈ものの生命〉にまで思いが及ばなくなってはいないか。〈もの〉にも生命があり、生命を吹き込む人たちが在ることがこういう作品たちに接すると鮮やかに見えてくる。伝統工芸とは〈ものの生命に気付かせてもらえるものである〉のだ。
  甲西町には、一閑張(いっかんばり)や大津絵、組紐、塗、菩提寺焼、蒔絵、根付などの工房もあり、職人さんたちは「甲西町伝統的工芸工房の会」を組織。大きな広がりになるといいなと思う。
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