天守閣を仰ぐ野外ステージで、若者が一人、ギター
をつまびき、語るように歌っていた。彦根城内の金亀
(こんき)児童公園、秋の昼さがりのことだ。聴衆はい
ない。だが、若者の周りには明るい清涼な光と同じよう
に、豊かな時間が流れているように、みえた。キラキラ
と。 |

国宝彦根域天守閣、美しい姿である。 |
最近、築城ブームとでもいおうか、全国で天守閣や
隅櫓の復元が相次いでいるが、封建時代そのままの姿を
現している天守は、長野の松本城や青森の弘前城、兵庫
の姫路城、そして滋賀の彦根城…等々、十二しかない。
これらの町で共通して感じるのは、町の人たちのフとし
た言葉づかいや心づかいに垣間見るちぎり絵のようなぬ
くもりである。城下町であるという、こちらの思いこみ
もあるからだが、そればかりでもなさそうだ。見上げれ
ば城がある。それも凛々しい姿で。城は今でも町の人た
ちの心のょりどころになっているのだと思う。 |

小谷城天守閣だった三重櫓・湖が見下ろせる。 |
井伊家35万石の城下町、彦根。低い家並みの甍の
上に聳える彦根城天守閣。井伊直政の遺志を縫いだ直継
が20年をかけて築いた名城である。明治の廃城令で取
り壊されかけていたのだが、名城の消失を惜しむ大隈重
信の進言で取り壊しを免れたというイワクがある。 |

大洞弁財天:彦根城、北東の守りの寺
…門内からお城がみえる。 |
幕末、開国を決めた井伊直弼の活躍を描いた舟橋聖
一の『花の生涯』の中で、直弼に仕えた国学者長野主膳
を通して語られる彦根城である。囚に、月明かりの中の
城の佇まいは“月明彦根の古城”として昭和25年、滋
賀県が選定した琵琶湖八景の一つになっている。 |

三重櫓の中から、西の丸広場をみる。 |