国道421号は永源寺町のほぼ真ン中を東西に横切る。
鈴鹿・釈迦岳の北方の右樽峠(いしぐれ)を越える道で、
八風を通ることから、この道はかつて八風街道という美
しい呼び名で呼ばれていた。伊勢へ通じる道として、明
治の初め頃まで、伊勢まいりの人々が往来し、近江商人
が盛んに利用したものだという。つまり、伊勢の海産物
はこの道を通って湖東へ運ばれ、近江の物産は伊勢や東
海・江戸に運ばれたわけである。永源寺名物の政所茶や
コンニャク、シイタケ等々を鈴鹿の山の向こうの人たち
も楽しみにしていた…と思うと、なんだか嬉しくなって
くる。ついでながら、永源寺の味覚を数えていくと、随
分と多彩であることに気づく。秋になればマツタケの楽
しみが加わり、清流でなければ棲まない岩魚(いわな)
の養殖もすすめられている。汚れない自然の中でしか望
めない「味覚」がこの町では健在なのだ。
物の往来は、文化の往来でもある。沿道の人々の生活
文化は八風街道によっでも刺激を受けてきたに違いない。
ー永源寺や政所、蛭谷、杠葉尾…等の集落で、一言一
言、言葉をかわした土地の人たちの穏やかなもの言いに、
長い歴史の中で積み上げられている豊かな心を感じた。
永源寺の目のさめるような紅葉、ひそやかな木地師の
里、豊かな自然…。秋、永源寺はひとまわり大きな懐を
ひらいてくれよう…。
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かつては近江商人の交易の道であった八風街道
(写真提供/永源寺町農林商工課)
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