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不飲橋を渡るとすぐ、明治天皇巡幸の時に休憩所
になった旅篭屋(はたご)がある。御主人の話では
「ただの旅篭だった私どもがお休み所に選ばれたの
はどうしてだったのか…。とにかくもう大変だった
ようです。」
「当時の主人の三代目は天皇にご挨拶した後、緊張
のあまり卒倒したそうで…」。玉座のある部屋で説明
して下さった。外に目を移すと、緑濃いしっとりし
た庭園がひろがっている。
天皇は往きだけでなく、予定していなかった帰り
にも休憩されたといい、てんやわんやの数日間だっ
たようだ。実は湖国の名物が鯉のあめ煮。このあめ
煮が気にいったのかな、と、気楽な現代の旅人は気
楽な推理をしたのだが、御主人の話では、東海道亀
山付近で流行病発生のため、急きょ、再び中山道を
通るということになっただけとか。それにあめ煮の
歴史は八十年ぐらいかな、とのこと。気楽な想像は
外れたが、それにしても、一口に八十年ぐらいのも
のです、とおっしゃる言葉の中に、街道文化の厚さ
を感じる。
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