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白檀の観音きま
一九四八年、ヒンズー教徒の青年の凶弾に倒れた
インド建国の父マハトマ・ガンジーは白檀(びゃく
だん)の木二トンを使って茶毘(だび)に付された
と伝わる。魂がその芳しい香りに包まれて天に昇っ
ていくように、と。
 高貴な香りの代名詞のように使われる白檀の霊力
は仏教の経典により語られてきたから、日本でもこ
の木へのおもいには崇高なものが加わる。「栴檀
(せんだん)は双葉より芳し」の、栴檀とはこの白
檀のこと。が、香りがよいとはいうものの、いい香
りがするのは心材であり、辺材には香気はないのだ
そうだ。つまり、香気のある材は僅かしかとれない。
だから、老山白檀を産するインドでは、白檀の輸出
を禁止しているのである。ところが、二十三トンも
の白檀の原木が日本に入ってきた。一九九五年一月、
インド政府は日本の一人の僧の熱心な懇願を受けて、
特別輸出を認めたのである。
 滋賀県安土町(あずちちょう)観音寺山にある観
音正寺(かんのんしょうじ)。西国三十三霊場第三
十二番札所のこの寺で今、インドから届いた白檀で
千手千眼観世音菩薩像が京都の大仏師松本明慶師の
手で彫られている。

西国32番札所の観音正寺の本尊が2000年、
本堂が2003年に完成する。

 観音正寺は一九九三年五月、本堂と重文の本尊を
焼失。なんとしてでも再建せねばならないという岡
村潤応住職の悲壮なほどのおもいはついにインド政
府をはじめ大勢の人の心を動かし、来年二〇〇〇年、
像高七メートル、総白檀の観音さまが誕生する。
「観音像は白檀にて造るべし。…一切の不吉祥は吉
祥に転ずるなり。」の経典の通りの仏さまだ。寺に
行けば、松本師たちの制作の様子が見学でき、仏を
彫った白檀の木屑も分けてもらえる。インドの閣僚
が言ったそうだ。「輸出を認めたのはヒンズーの神
さまと千手観音さんが相談されて決められたこと
だ。」と。制作の様子が見学できるのも、木屑の授
与もその感激を分かち合いたい、という住職の発案
である。


観音正寺の本尊になる千手千眼観音坐像のモデル像。
実際はこれと同じ形で7メートルの総白檀の仏像になる。
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